DC色々体験記 2003年11月8日ナショナルギャラリー

(絵はクリックすると拡大します) 

 

午後3時半から1時間半、オランダ旅行の準備もかねて、頭を美術鑑賞モードにしておこうとナショナルギャラリーへレンブラントを見に行く、、、も、まさにレンブラント辺りの時代のコーナーが改装中。ナショナルギャラリーだけで20点近く持っているはずのレンブラントの作品も“Lucretiaと“The Mill”の2点のみの公開。自画像は無し。

もっとも2作だけといっても、“Lucretiaは静かな作品のようでいて、頬、首筋の赤みとナイフの角度が、悲嘆に暮れつつもやや興奮した女性の動きの一瞬を切り取った、非常に動きのある作品。手のひらをハッキリとこちらに向けた左手も、世間との隔絶の意思を表して女性の悲しみを増している。Millも、よく見れば空の色がこちらと向こうで全く違う。人々の暗い視線はこれからますます暗くなる空を暗示しているようだ。

2点をじっくり見てから、Goghへ。こちらはいつもの通り、6点が飾ってある。全て1888年以降、1890年に47歳で死んだゴッホにとってはいずれも「晩年」の作品。いつものごとく、引き寄せられるようにSelf Portrait1889)へ。この絵はすごいなあ、といつも思う。真っ青の背景と、真っ青の服。強い視線に絵の具だけ。自らが画家でありそ例外の何物でも無いという強いアイデンティティに圧倒される。この絵はパワーがありすぎて、仮に自分に呉れると言われても、家に飾っておくと精神的に疲れてしまいそうだ。Girl In White(1890)も側で見ると、この絵の具の使い方はなんなんだ、、といつも見入ってしまう。絵はがきなんかでは分からない実物が見られることの幸福。それにしても、いったん書いた後で、何か物足りないと思ったのであろうか。オレンジの8つの点、花びらを思わせる青い記号のような線。Mysterious。(是非絵をクリックして拡大して見てください)

Roses(1890)も全体がエメラルドグリーンで、風が吹いているかのような背景。美しいようで、よく見れば枯れかけているようにも見えるバラは晩年の作品だからか。

 

続いて東館へ行ってみると、Picassoの「The Cubist Portraits of Fernande Olivier」展。1909年のピカソが愛妻について描いた60点の作品(デッサン・試作含む)を集めた企画。入り口付近の4点の同じ構図の"Head of a Woman"(紙質を見たところ続けて描いたものと思われる)もドイツ、MOMA、シカゴ、スイスなど世界中に散っていたもが一同に会し、「同窓会」の趣。写真は禁止なので、ちょっと持っていたメモ帳に写してみるが、なかなか難しい、、、が人間の顔のような曲面をCubeに還元していくピカソの思考の過程を追体験出来たような気がした。また、これがただ直感によって生まれたものではなく、直感の上に緻密な計算を積んだものであるのだと感じた。

1時間半だったがなかなか中身の濃い時間だった。

(おわり)