11月27日(1日目) Rijiksmuseum Amsterdamの感想
【レンブラント】
館内はフラッシュがなければ撮影可。今回の旅の目的は「レンブラント」(1606-69)なので、一目散に彼の代表作「夜警」(1642)のもとへ。一番乗りで、「夜警」を楽しむ。5m四方はあろうかという大きい絵だとは知らなかった。あと、全然暗くないな、というのが第1印象。
「夜警」(1642)
この絵は当時流行した「集団肖像画」というカテゴリを超えた絵、として有名だが、美術館内では、周囲に飾ってある「平凡な」当時の集団肖像画との比較をしてしまうし、そうさせている美術館の配置もにくい。見れば見るほど、レンブラント特有の各人の性格まで描写された人物像が、絵の中に組み込まれたstoryとマッチしている。無駄に加えられている、と思われる者がいない構成はスバラシイ。描かれた人は絵の中の人物像の大小に関わらず、その絵における位置づけを見てきっと満足したに違いないと想像するのであるが、史実は注文者はこの絵に不満でレンブラントに対し訴訟まで起こし、またこれがきっかけにレンブラントの没落が始まった(そういう点ではまさしくこれは彼の「絶頂期」の作品)とのこと。そんなに度量の狭い輩はレンブラントのような画家に依頼をしちゃいかんのだ、と義憤にかられる。
「布地組合の見本審査官達」(1662)
続いてこれまた有名な「布地組合の見本審査官達」(1662)。これまた想像していたより大きい(3m×2m)。これも近くに飾ってある同じモチーフの平凡な絵と比べるとその差は歴然。「アイドル5人組」との言葉が浮かんできたが、そのような「一体感」を感じるのは、右の4名が微妙に中央に向けて傾いているところにあると見た。一人一人のなんだか胡散臭い冷たい表情がcool。
(その他)
1661年、彼が55歳の時の自画像は、年老いて丸くなった様子が伺われる。「ユダヤの花嫁」として知られる作品は、絵の中央に置かれた手の表情が印象的。
21点を所蔵する同美術館だけあって、肖像画にも素晴らしい作品が多い。上に上げた自画像以外にも、レースの細かさの精密な描写が、柔らかな肌を際だたせている「マリアトリップの肖像」(1639)、頬の赤みなど、写真のような技術の高さを示す「ハーシェ・ヤーコプスドホテル・ファン・クレイプルの肖像」(1634)(写真)、「説教師ヨハネス・アイテンボハールトの肖像」(1633)などの細密な筆致を見るに付け、30年代にレンブラントが名声を獲得しいった勢いが感じられる。レンブラントの母がモデルといわれる(美術館の解説では否定されているが)「女預言者アンナ」(1631)も光の当て方の美しさ、光が当たっている部分ほど緻密に、丁寧に描かれており、手の血管・しわなどはそこだけが写真のよう。その他もろもろ含め、確認できただけでも15点のレンブラントの作品の実物を鑑賞できた。
【フェルメール】
これだけでかなり「お腹一杯」なのだが、この美術館はフェルメール(1632-75)の作品も4点所蔵。「The kitchen maid」(1658)、「The little street」(1658)、「Woman reading a letter」(1663)の3点が展示されていた。いずれも彼が26歳−31歳の作品。その成熟ぶりには驚かされる。構図の安定感、絵から漂う静寂な雰囲気、落ち着きすぎていて心憎い。「kitchen〜」(写真)は、ミルクを注ぐ瞬間をとらえたものだが、白い細かい点で表された光の表現などは彼独自のものらしい。「Woman〜」は窓に向かって手紙を読む状況、壁のオランダの地図などでストーリー性を持たせているものらしいが、よくわからん。ぼやけたような色彩
で、写真のピントが合わせづらい。「The little street」(写真)は、彼の2点しかない風景画のひとつ。煉瓦の一個一個が微妙に色を変えられていたりして、細かい芸。ちょっとのっぺりした感じが好みではない。
【ヴァン・ゴッホ】
この美術館はゴッホも3点展示。恐らく初期の静物画。パリ時代の自画像。パリを離れアルルに行ってからの風景画。ゴッホについては3日目のゴッホ美術館の時にまとめて。
レンブラント、ゴッホ、フェルメールで一応目的は達するも、その他の作品も一通りぼーっと眺める。レンブラントと同時期の肖像画家Halsの作品がなかなか面白い。前はレンブラントの引き立て役くらいにしか思っていなかったが、「陽気な酒飲み男」の軽快なタッチには惹かれるものがあった。
一応美術館内は一通りは見たが、写真を撮りながら2時間もいると疲れてくる。Museum Shopで絵はがきの他、有名所蔵作品の解説、「夜警」だけに特化したややマニアな解説本(いずれも日本語!)を購入。