DC色々体験記

2003年3月

 

3月某日

 英会話を教えてもらっているアメリカ人女性の彼氏は期限6月の観光ビザで入国して既に3年経過している不法移民(ブラジル人)。でもカリフォルニアの路上でソーシャルセキュリーティナンバー(SSN)を購入(彼女曰く「貧乏人が自らのSSNを路上で売っている」)し、これを元に運転免許も手に入れ、今は花屋の配達をしているらしい。税金も納めているという。戸籍制度・住民票制度の無い国。でも、こうなってくると何が不法なんだかよく分からない。「この国の入国管理制度は崩壊している」と彼女は言った。

 

3月某日 3日間大きな仕事の手伝いをして大変だったが、日本のテレビニュースには画面の隅ながら沢山写ったようで、テレビで見ました!メールが3通来た。

 

3月8−9日 NYへ(別ページ)

 

3月某日

職場の同僚とワシントンオペラ「AIDA」鑑賞。エジプトを舞台にした悲しい恋愛劇。出演者の技術、声量、シンプルだが美しい舞台装置、恋愛劇には不釣り合いな恰幅のよい(”コロコロした”という表現がぴったりの)ヒロイン、ヒーロー(オペラ歌手だから仕方ないが)に圧倒された。休憩も入れて4時間弱と長かったけど。記憶が定着しないというか、音楽が頭に入らないので、何が楽しかったのか回想できないのが残念。ストーリーを読んでいくのも大事だが、事前に音楽やDVDで予習していったらさらに楽しいのだろう。

 

3月某日

 サックラー、フリーア、アフリカ美術館へ。DCへ来て1年経とうかというのに、わずか2回目。一期一会ならぬ、一期一絵だ。フリーアでは、じっくり中をビデオ撮影。充実した東洋美術の作品。しかし日本美術、浮世絵のコレクションをここDCで見るのは違和感を感じる。金剛力士像や快慶作阿弥陀如来(写真)もここで余生を迎えようとは、まさにお釈迦様でも御存知あるまい(古!)。

3ギャラリーは全て地下で続いているのだが、東洋系の観光客が多いサックラーからアフリカ美術館に入ったとたんアフリカ系アメリカ人が多くなる。およそ6,7割がアフリカ系。ルーツを訪ねる気持ちは世界共通。

 

3月某日

 Best Buy(家電量販店)DVD player購入。89ドルの20ドル引きで69ドル。20ドルは10週間後に小切手で送られて来るというよく意味の分からない割引。本体は安いが、40ドルのケーブルが必要、としつこく勧めてくる。調べてみたら、故意に高いケーブルを勧めていて、隣にある10ドルのものと機能は同じ。ひどいことしやがる、と思って当然10ドルの方を買って帰ってDVDの箱を開けてみたら、同じケーブルが既に入っている。いい加減な商売。しかしこの手の話はよくあることで、友人に話しても「アメリカだもん」で片づけられる。DVDを早速テレビに接続して、友人に借りていた「Load of the Ring」を見る。歴史物らしく白黒だ、と思って1時間半見ていたところで、一応友人に確認したら、「白黒のはずはない。DVDの接続がおかしい」と言われ、慌てて接続し直したら見事総天然色画面が現れた。でも、白黒の映像も結構映画の雰囲気に合っていたぞ、と負け惜しみ。

 

 

3月17日

 ブッシュ大統領によるイラクへの最後通告の演説。一説によれば、安保理へ持ち込んだ時点で、アメリカは最後まで安保理決議を求め続けるだろう(したがって少々の事は言っても許されよう)と見たフランスと、決議1441が通った時点で、最終的に武力行使にフランスは同意すると見たアメリカのいわば双方の読み違いの結果が開戦。

48時間以内のフセインの亡命先(受け入れ先)は果たしてあるのかと考えた結果、

『とりあえず曾野綾子邸にかくまってもらう。その後、法務省が戸籍を調べたら実は「布施定(ふせ さだむ)」という名前の日本人であったと認定してもらう』というフジモリ元ペルー大統領の第2弾というのを考えたのだが、、、。

 

3月19日 ブッシュ大統領の演説。イラク攻撃の開始。

 圧倒的なアメリカの軍事力。フセインはどのような最後を迎えるのだろう。

ダッシェル民主党院内総務のブッシュ演説前のブッシュ批判(外交努力を尽くしていない等)に対する共和党の反論相次ぐ。トーンとしてこのタイミングでの批判はけしからん的な、物言えば唇寒しといった状況。知り合いの元議会スタッフとMさんとの会話。

自分「言論の自由はあるの?批判を一切許さない雰囲気は良くないと思うが。」

M「批判は自由だ。言論の自由は保障されている。でもこの軍隊を出そうというタイミングで行うべき発言ではない。」

自分「それではブッシュが外交努力が足りないと思っている人はどのタイミングでそれを言えばいいの?」

M「キミの言うことは解った。でも大部分のアメリカ人はそう考えないよ」  

 軍隊への敬意の高さ、また実際に多数の若者が戦地へ赴いている状況は日本人からは想像しにくいとはいえ、やや違和感を感じる。

 

 3月某日NYへ(別ページ)

 

3月某日 夜、友人と3人で「ボーリングフォーコロンバイン」を観る。アメリカではほとんど公開は終わっていて、細々とやっている定員100人くらいの小さな映画館へ。アカデミー賞受賞時の”Bush, Shame on You.”の影響か客の入りは良い。

 マイケルムーアのアメリカの銃社会の“異常さ“に対するユーモラスでかつ執拗な追及、こんなことしていいの!?というドキュメンタリーならではの突撃取材にハラハラ。カナダはアメリカと同じく銃保有を許しているのに年間の銃による死亡事件は100件以下。アメリカは11000件以上だそうだ。

 

3月某日 トムハンクス主演の映画”Road to Perdition”をDVDで見る。字幕つきで見るとフォローできるようになってきた。トムハンクス上手い。やましい商売をしている父親の後ろめたさ・子供に対する戸惑い、距離感が見事。少し英語が上手くなってきたかなという思いは、続いて「市民ケーン」を見て打ち砕かれた。

 

(3月終わり)