連載
石の神様、仏様

お寺や神社でわたしが一番好きなもの。それは石でできた仏様や神様の像です。
境内の片隅でひっそりと微笑む神様や仏様を見つけるたびに、あまりにも魅力的で、写真を撮らずに いられなくなるのです。

時には、ひとつの石仏の写真を撮るために、一日中同じお寺にいたり、時間や季節を変えて再訪したり。 そうすることによって、石仏や石の神様は、思いもよらない表情を見せてくれます。

数年間かけて撮り溜めたわたしの大切な写真たちを、一枚ずつ公開していきますね。


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●石仏についてもっと知りたい!という方は、こちらもごらんください


2011年5月27日 大分県豊後高田市 
熊野磨崖仏の大日如来



今のことだけを考えて生きるべし。

過去なんか振り返っても意味ないし、
未来のことは、このわたししか知らないのだから、
君が考えたってどうにもならない。

しかし、ひとつだけ保障できることがある。
君が死んだら、わたしが引き取って面倒を見てやろう。

だから諸君、それまでは安心して、今を生きたまえ。


九州の北部、国東半島には、このように立派な磨崖仏がいくつもあり、
中でも有名なのが、この熊野磨崖仏です。
この大日如来像は、高さ6.7m。お隣には、高さ8mの不動明王像もあります。
大日如来は、密教の世界の中心となる偉大な仏様で、宇宙そのものとも言われます。
この方が照らしてくださるおかげで、世界はいつも輝いているのです。




2011年5月11日 神奈川県川崎市、浄慶寺の羅漢さん



わしがこれまで生きてきて学んだ唯一の真理は
「人生、いつだって笑ったモン勝ち」ということである。
たとえばわしは今、将棋を指しているが
、 どんな難しい局面でも、かかかと笑う作戦だ。
そして相手がひるんだスキに、
予想だにしない場所に、ポンと置いてやるんだな。

わしはあんまり考え深いタチじゃないから、
盤の上の勝負には、たいてい負ける。
しかし相手は、「よくまあ、こういうおバカな場所に置くもんだ」と笑ってくれる
。 将棋なんてしょせん遊びなんだから、
最後は、笑わせたモンが勝ちってことよ。

人生ってやつも、ある意味、強力な敵との勝負である。
思いもよらない方向から攻めてくるものがたくさんあって、
そう簡単には勝てないようにできているんだな
。 しかし、勝利の女神様は、手をこまねいて立ちすくむ者より、
めちゃくちゃでも、笑いながら前に進もうとする者を好むのだ。

だからあんたも、笑ってみなさい。
女神様がいる天の上まで聞こえるような、大きな声でね。


浄慶寺は、新宿から40分で行ける里山の寺。
境内は花で埋め尽くされ、野鳥が飛び交う別天地のようなところです。
こちらには、わりと新しい羅漢さんの像がたくさんあり、
パソコンを操ったり携帯電話をかけたり酒を酌み交わしたりと、
それぞれに、楽しい時を過ごしておられます。
中でも、この将棋を打つ羅漢さんのビッグスマイルに癒されました。



2011年4月27日 東京都港区、承教寺の狛犬



俺は、こう見えても狛犬である。
狛犬と言っても犬コロなんかじゃなく
獅子、すなわちライオンだ。
つまり俺は、このように端正なオトコマエであっても
勇猛な百獣の王なのだ。

エジプトのピラミッドの前に
スフィンクスとかいうやつがいるのを知ってるか?
何を隠そう、あれは俺の遠い親戚である。
ま、俺にくらべたら知名度や存在感がかなり劣るが、
あいつらも、それなりにがんばっているみたいだな。

スフィンクスは、世にもつまらんなぞなぞを出して
答えられない人間を食っちまうらしいが
俺のなぞなぞは、もっとはるかに洗練されている。

なぜ、俺の目の上にはヒトデがあるのでしょうか?

人気があまりに高くて、見物の人出が多いからで〜すって、
ホントか?


高輪のメリーロード商店街は、かつては古い街道でした。
そのため高級マンションや商店の間に、面白い寺や神社が点在しています。
中でも、この狛犬君がいる承教寺が人気で、
すごい人出ってほどではないにせよ、
街歩きマニアの方々が写真を撮っているのを、よく見かけます。



2011年4月17日 兵庫県、五百羅漢寺の羅漢さん



この世にお天道様ほど公平なものはない
だって光は、誰の上にも同じように降り注いでいるだろう?

でも、それを当たり前と思う人には
ありがたさがわからないんだろうな
光は公平でも、それを受け取る側の能力が公平ではないのだ
この能力の差が、いい人生を送れるかどうかの分かれ道だと
俺は思うね

だから俺は、いつも自分のアンテナを磨いて
光を受け止める努力をしている
そして近いうちに、俺自身がお天道様になって
皆に光を届けてやるのだ
夜明けは近いぞ。待ってろ!ニッポン


いつ、誰が、何のために造ったのか。
何もわからない謎の羅漢像が無数にある寺です。
素人さんが彫ったものらしく、彫刻としての完成度が高いとは言えませんが、
ひとつひとつ表情が違い、眺めているうちに、
それぞれが、ものすごい力を秘めているように思われてきます。



2011年3月14日 東京 五島美術館の馬頭観音




困難なできごとが起きてしまいました
おひとりでも多くの方の命が救われますように
ひたすら祈ります

世田谷の五島美術館の庭園で見つけた
癒しの微笑みを浮かべる馬頭観音様です
どうかこの祈りが少しでも被災地の皆様に届きますように。



















2011年3月3日 東京 深大寺の釈迦如来




ああ、やっと桜が咲いたな
光がまぶしいぜ
でも、俺がここに座っている間には、
嵐の日や吹雪の日もあったものだ

どんな冬にも必ず終わりがある
だが、夏中ここに座っているのも
けっこう厳しいもんだぜ

いいことばかりは続かない
かといって、悪いことばかりでもない
そういうふうに考えていれば
いろいろなことを乗り越えるのが楽になる




この写真を撮ったのは、3年くらい前かな?
満開の桜の下のお釈迦様は、何だか誇らしげに見えました。
冬を乗り越える我慢強さが、春の喜びに繋がることを教えてくれるかのように。








2011年2月25日 鎌倉 浄智寺の如意輪観音




このごろ少し、日が長くなってきたね
夕暮れ時もさびしくなくなったね
もうすぐ梅が終わって、次は桜だね

いつも隣に同じ顔がいて
同じことを同じポーズで語り合う

変わらないことの幸せを知っている
お雛様みたいなふたり



4年くらい前の、ちょうど今ごろに鎌倉をひとりで歩いていて、撮った写真です。
浄智寺の奥の、ちょっと見つけにくいところにいらっしゃる夢見るような如意輪観音さんたち。

けれど、今の季節の夕暮れ時に行かなければ、このような光景は見られません。石仏との出会いは、 一期一会のものです。